トラストフォーマットについては、以前トラストフォーマットって何?ゼロから学ぶトラストフォーマットで説明させていただきましたが、本日のテーマは 顧客の信頼(トラスト)を逆手に取った『ダークパターン』についてです。
有料のWEBサービスを解約しようと思ったのに、退会ページの場所が見つからず、つい後回しにして 課金されてしまった。
そんな苦い経験はないでしょうか?
それがダークパターンなのです。
ユーザーエクスペリエンスの専門家であるハリー・ブリヌルは、2010年に「ダークパターン」という言葉を作りました。
ハリー・ブリヌルは、自身が運営するサイトDark Patternsにてダークパターンを次のように説明しています。
Dark Patterns are tricks used in websites and apps that make you do things that you didn’t mean to, like buying or signing up for something.
ダークパターンは、何かを購入や申し込みをする際、意図しないことを実行させる、ウェブサイトやアプリで使われるトリックです。
つまり、ダークパターンとは、ユーザーが無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザインのことです。
認知バイアスを利用して、ユーザーが思っているよりも多くの時間やお金を使わせたり、注意を払うように設計されています。
目次
1.ダークパターンの種類は?
ハリー・ブリヌルは、ダークパターンの認知度を高めるために、ダークパターンを12種類に分類したサイト「darkpatterns.org」を運営しています。
1.ひっかけ質問
まぎらわしい質問で、ユーザーを特定の選択に誘導する。
2.こっそりカゴに入れる
顧客の同意なしにユーザーのショッピングカートに商品を追加する。
3.ゴキブリホイホイ
簡単に登録できるが、キャンセルや退会方法が複雑で難しい。
4.プライバシー・ザッカーリング
ユーザーが考えているよりも多くの個人情報が公開される。
5.価格比較の阻止
売り手が自分の商品と他の商品の価格比較を意図的に難しくする。
6.視覚的干渉
ユーザーに知られたくない事実があるときに、他のものに注意を向けるよう仕向ける。
7.隠されたコスト
購入プロセスの最後で、配送料、税、サービス料など予期しない金額が発生する。
8.おとり商法
おとりの情報を利用して、ユーザーに意図しない行為を実行させる。
9.コンファームシェイミイング(羞恥心の植え付け)
ユーザーがオファーを断ろうとすると、羞恥心や罪悪感を与えて、あたかも断ることに罪があるように思わせる。
10.偽装広告
クリックを誘うため、そのサイトのコンテンツであるかのように偽装した広告。
11.強制的な継続性
サービスの無料トライアルが終了すると同時に、何の告知もなくクレジットカードへ料金を請求する。
12.友達スパム
ユーザーのアドレスやソーシャルメディアのアカウントから勝手にスパムメールを送信する。
引用元:darkpatterns.jp
2.ダークパターンの実例
メルマガ購読をやめたいのに、配信停止リンクが見つからない。
ログインしないと配信停止の設定ができないってイライラしたことありませんか?
使わなくなったサービスの会員IDとパスワードなんて、いちいち覚えていないですし、そして何より手続きが面倒くさいですよね。
これは、ゴキブリホイホイのダークパターンなのです。
初期設定がわざと個人情報を差し出すようにチェックが入っている。
多くのユーザーは初期設定のままサービスを利用するため、気が付かないケースが多いのです。
これは、プライバシー・ザッカーリングと呼ばれるダークパターンです。
ネットショップの代金の最終確認ページ。
小さなリンクをクリックすると、勝手にメルマガ購読と個人情報提供にチェックが入ってる。
こんなトラップみたいな姑息な手段にはまって、怒りを感じたことはありませんか?
最初からチェックボックスがオンになっていて、「同意」がデフォルトになっている場合、これはひっかけ質問です。
実は、このような悪質行為はローカルな中小企業はもちろん、AmazonやGoogleのような世界的企業でも行なわれています。
ダークパターンがまかり通る理由、、、それは利益になるからです。
3.オバマの選挙チームも使ったダークパターン
一部のユーザーを苛つかせ、そのうちの数%が去ったとしても、ダークパターンを使ってかすめ取れる利益の方が大きいのです。
例えば、あの有名なオバマの選挙チームもこのダークパターンを使っていました。
これは2012年のオバマキャンペーンで 配信されていたメルマガのフッター(下部)です。
メルマガの解除リンクと、メールアドレス変更のためのリンクが、それぞれ用意されています。
最初オリジナルのパターンでは「update address」「unsubscribe」という標準的なリンクテキストを使っていました。
しかし、オバマ陣営としては少しでも支持者との接点を保ちたい。
そこで、メディアチームが考えた戦略は、フッターのエリアをごちゃっとさせ、リンクテキストを「here」に置き換えること。
目立たないように、わかり難いようにしたのです。 すると結果はどうなったと思いますか?
購読解除率を22%も下げることに成功しました。
短期戦での手荒なやり方ではありますが、結果、このキャンペーン内でオバマは6000万ドル以上の寄付金を手にしたのです。
3.買い物かごへの忍び込みにご注意を!
一線を越えると炎上する、このテクニックはお金になります。しかし、多くのユーザーを失う可能性を秘めています。
例えば、今話題の某ファッションサイトでは、商品を購入する際に「プラチナムに登録する」という項目があり、初めからチェックがついている状態になっていました。
さらに支払い確認ページでも、お試し期間後に料金が発生することを伝えていなかったのです。
このダークパターンにより、大量の課金が発生。
あとになって、「勝手にお金が引き落とされた」と顧客からクレームが殺到しました。
利益を優先している企業では、しばしばこのようなことが起きるのです。
決して故意に顧客を陥れてはいけません。
しかし、それでもダークパターンは恐ろしいほどに効果を上げます。
守秘義務があるため、企業名までは明かすことはできませんが、実際に、集客ページでダークパターンのテストを行った、ABテストの結果をシェアしましょう。それがこちらです。
Bのダークパターンが204.51%の差をつけて圧勝しています。
※顧客からクレームが発生しないギリギリのラインでダークパターンをテストしています。
クレームはゼロ。ダークパターンはまさに「禁断のツボ」です。
手を突っ込んだが最後。大金をつかむ可能性があるが、抜けなくなるかもしれません。
ビジネスが傾く可能性だって秘めています。
4.まとめ
日本ではまだですが、ダークパターンは世界的に規制が進んでいます。
あなたのご利用サイトやサービスを確認してみてはいかがでしょうか。ダークパターンが潜んでいるかもしれません。また、もしあなたがサイトを作成する側でしたら、是非見直してください。もし、ダークパターンだと思われる部分が見つかれば、顧客の視点に立って改善し、顧客にとって信頼(トラスト)のおけるサイトを目指していきましょう。
もっとダークパターンの事例あります。
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